【対談】NPO法人リトルワンズ代表 小山訓久さん x まちのおやこテーブル ヨーコ

ひとり親世帯のサポート、子どもの貧困の啓発活動、空き家を活用した住まい支援など、日本で先進的な活動をされているNPO法人リトルワンズ。その代表である小山さんにお会いすることができました。杉並区の中間支援施設・杉並協働プラザに相談に行った際に、リトルワンズの拠点が杉並区であるとを偶然知り、さっそくご紹介をお願いしました。

ヨーコ:まちのおやこは、カフェや公園、本屋、NPO法人の事務所など地域で拠点をもつ方と関係を作りながら、街中で親子の場所を作ってきました。いつか、自分たちの拠点を持ちたいと考えています。リトルワンズさんは、親子カフェほっくるや空き家活用の事業を行っておられますが、どのように場所を作られてきたのですか?

小山:まずお伝えしたいのは、私たちにとって、空き家活用はあくまで手段であることです。目的はひとり親世帯の住まい(暮らし)支援です。空き家は日本でどんどん増えていますし、活用も進んでいないため、空いている物件はある意味いくらでも手に入ります。でも、空いている物件だからといって、住まいに合っているとは限りません。親子が安全に住めるエリアなのか、保育園や小学校は徒歩圏内かなど、親子にとって安心できるかどうかで、場所(住まい)が決まってきます。

ヨーコ:確かにそうですね。そのような住居はNPO法人が取得されているのですか。

小山:NPO法人が取得した住居も複数ありますが、多くはサブリースというカタチで、賃貸物件をひとり親世帯に提供しています。空き家は行政と共同所有する場合もあれば、オーナーからNPO法人が借りてひとり親世帯にサブリースする形態もあります。その際は居住者探しや家賃収納、居住者支援等の管理会社的な役割を担っています。親子の居場所であるおやこカフェほっくるは民間の賃貸物件を私たちが借りて運営しています。

そもそも物件の活用や地域の居場所作りは、泥臭い仕事です。オーナーさんや地域を説得したり、入居のために工夫をしたりと、見えない仕事がたくさんあります。地域で信頼を得ていないと、居場所や住まいは作れないです。不動産会社のホームページで公開される物件はほんの一部で、公開されない物件もあれば、そもそもデータベースにすら掲載されない物件もあります。そのような情報は地域に眠っています。その情報を教えてもらえるのはやはり人間関係のおかげです。個人として信頼されることに加えて、法人の実績やブランドも信頼には必要でしょう。

ヨーコ:まちのおやこテーブルの創業の地、国分寺でそのような関係性を作り、歩けば知り合いに会えるだけになるのに5年かかりました。杉並区でも地道に活動を積み重ねていくことなのでしょうね・・・。

小山:地道な積み重ねも大事です。同時に、事業を前に進めるには実績がある地域の先駆者と組むことも良いと思いますよ。既に拠点を持っているところの運営支援からスタートする、自分たちの出来ることでお手伝いをするなど、関係作りはたくさんできるはずです。まちのおやこテーブルのモンテッソーリ教育を参考にした子育てのノウハウなどを提供することも、居場所を運営している団体にはありがたいことかもしれません。

ヨーコ:貴重なアドバイスをありがとうございます。すぎなみ協働プラザのような支援団体が身近にあることで、リトルワンズさんを含めて先輩団体を紹介いただけることはとてもありがたいです。

ヨーコ:私たちは拠点を持てたら、親子や子ども達だけではなく、地域の人とのつながりを持てる「開かれた場所」を作りたいと思っています。ご支援されているひとり親世帯の皆さんにとって地域コミュニティをどう考えていらっしゃるのでしょうか。

小山:自宅と職場、保育園・学校の往復だけで、地域と関わる時間や機会が少ないことは、誰にでも起こりえることです。地域がただの消費の場になってしまうこともありえます。家族のかたちに関わらず、誰にでも心理的な安全の場としてコミュニティは必要です。ひとり親は、お金や時間、情報の点で制限されることも多いので、そのために、私たちのような団体が地域の繋ぎ役にもなっています。

場づくりにおいて重要なことは、そこに行きたいと思えるかです。かたい雰囲気のところには相談しづらいし、暗い雰囲気の場所には子どもと一緒にいけないですよね。そこに行きたくなる楽しみや喜びがあり、素敵な場所でなければ人は来ません。親子カフェほっくるは、誰でも楽しめるように、お客さんが主人公になれるように工夫をして作っています。そのあたりのことは、『親子カフェのつくりかた』に詳しく書いたので読んでみてください。

ヨーコ:読みます!ほっくるは小さい子どもと一緒に安心して出かけられて食事や交流ができる場所として、杉並区で大人気だと聞きます。私たちは、子育て世帯以外の人にも開かれた場でありたいという思いもあるのですが、そのような場所って作れるのでしょうか?

小山:男性、高齢者、外国人。地域には様々な方がいて、「みんなの場所」という言葉は綺麗です。でも、そのような場所を継続して運営するには、どうしたら良いのでしょうか。年齢や文化が異なれば、場に対する期待が異ります。誰にも好かれるようにして、実は誰にも魅力がない場所になってしまうかも。ママはネットワーク作りをしたい。パパはちゃんとスキルを学びたいなど目的は異なっています。場所への期待や目的が異なることは、すなわち運営にも関わることです。

「みんなの場所を作る」というのは、とても良いことです。一方で、継続的に運営できないと居場所にはなりません。継続するためにも、お金のことや運営のこともぜひ考えてください。みなさんは、すてきなビジョンを持っていらっしゃいます。それを、どうカタチにしていくのか。情報収集や勉強で終わらせず、前に進めてみましょう。期待しています。

ヨーコ:今日は先輩に激励いただいた気持ちです。貴重なお時間をありがとうございました。

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2021-08-02 | Posted in ブログComments Closed 

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