【レポート】子育て連続講座一人でできるように手伝って!知っておきたいモンテッソーリの子育ちの法則(第1期2019年5月〜7月)

2019年5月から7月に3回にわたり「一人でできるように手伝って!」をテーマとした講座を行いました。

講師は、国際モンテッソーリ協会(AMI)公認教師で一般社団法人AMI友の会NIPPONの副理事長の深津高子さん。国分寺在住で、まちのおやこテーブルの呼びかけ人のお一人です。親しみを込めて高子さんとお呼びしています。高子さんが語るモンテッソーリ教育はモンテッソーリを知らない人にもとても分かりやすく、豊富な事例で日常に取り入れられるヒントがいっぱいです。主催者自身が子育て真っ只中の時に聞いて感動したお話を、多くの人に聞いてもらいたいと思い企画しました。

もともと10名程度の少人数で実施予定のイベントには申し込みが次々と入り、定員を倍にして実施。それでもキャンセル待ちをされる方が数多くいらっしゃるほど注目が集まりました。参加された方は、1歳・2歳を中心に子育て真っ只中のお母さんやそのパートナー、お子さん向けに講座やワークショップをされる方など20名。お子さんと一緒に参加された方も多く、各回総勢30名ほどで実施しました。

第1回講座の様子

第1回の講座はこんな言葉から始まりました。Aid to Life(いのち(生命)が育つお手伝い)。モンテッソーリ教育とは何かを端的に表した言葉です。

モンテッソーリ教育では、子どもは大人が教えて詰め込んでいく「空っぽのバケツ」ではなく、どう育つのかは生命の法則として子どもの中に組み込まれている。子どもは一人ひとり固有の可能性を持った「球根」と捉えます。別の言葉では子どもには「内なるガイド」(inner guide)がいるとも言います。

子どもは球根であるという見方をすると、親や周囲の大人の役割は子どもが自ら育つことのお手伝い。いわばサポーターと言えます。そうすると、大人の子どもに対する接し方は、手取り足取り教えることではなく、子どもの自立を支援することになります。

ではどのように子どもをお手伝いするのでしょうか。講座では、「子ども」、「準備された大人」に「整えられた環境」を加えたモンテッソーリの三角形が紹介されました。大人の大きな役割は「整えられた環境」を作ること。

たくさんの事例が写真とともに紹介されました。例えば、子ども自身が大人と一緒に家事ができるように環境を整えるには、子どもの手が届く高さに食器を置く、子どもサイズの掃除道具を用意していつも同じ場所に置くようにするなど。何でもスイッチ一つで家事が済んでしまうと大人にとっては楽ですが、子どもの自立をお手伝いするのに良いのは「ちょっと不便で楽しい生活」、と高子さん。

この時、大事なことは大人の態度や言葉。「失敗は友達」として、子どもが始めからはうまくできずに失敗するものだと認め、怒るのではなく片付け方を見せることも立派な環境づくり。子どもが集中しやすいように環境を整えるため、興味を持ったら没頭できる一人机を用意することが例の一つに挙げられましたが、この時も大事なことは、夢中になっている時に大人が話しかけずに見守ること。大人の言葉や態度は「環境」の一部であることを学びました。「人的環境」というそうです。

第2回の講座は、いのちの春夏秋冬と題してモンテッソーリ教育の「発達の4段階」が紹介されました。24歳までの期間は「乳児期(0歳―6歳)」、「児童期(6歳―12歳)」、「思春期(12歳―18歳)」、「青年期(18歳―24歳)」の4段階に分けられるそうです。爆発的に成長し変化が激しいのが乳児期と思春期。

どの国の子どもにも共通して現れるという発達の4段階を知っておくと、親は発達に合わない要求をせずに済みますし、子どもの成長について予測が立つので安心感が生まれます。例えば、優しい子に育って欲しいと2歳児に「ごめんなさい」と言わせたり「どうぞ」とおもちゃを譲り合うことを願っていませんか?これらは2歳児の発達段階からするとできないことだそうです。相手を思いやることや共感することができる脳の発達はずっと後の4歳半くらいだそうです。

乳児期の発達で意外に受け止められたことはお手伝い。子供たちは発達の欲求として手や身体を動かしたい、大人と同じことをしたいという気持ちがあります。家事を一緒にやってみることは、子どもにとっても嬉しいこと。大人にとっても助かりますし、家事が楽しい親子の時間に変わります!

第3回の講座のテーマは「自立」。親の誰もが願う子どもの自立には、「身体的自立」、「精神的自立」、「知的自立」の3つがあることが紹介されました。そして、自分で考えて自分で動く知的自立はひとっ飛びに叶うものではなく、身体的自立、精神的自立を経て獲得されるものだそうです。

身体的自立や精神的自立、知的自立を助ける環境の整え方を物的環境と人的環境に分けて紹介されました。特に、精神的自立では、「話しかけずに見守る」、「褒めすぎないで認める」、「失敗は友達(親が先回りしすぎない)」ことが大切ですが、親がやってしまいがちな例が紹介されると、参加者は苦笑い。良かれと思ってやっていることが精神的自立を妨げかねないことを学びました。親は子育てのために何かを「する」よりも「しない」ことを心がけた方が良いことが印象的でした。

商業デザイナーとして会社員生活を送った後、難民支援の現場でモンテッソーリ教育に出会った高子さん。広く世界を舞台に活動される高子さんから、モンテッソーリ教育の普遍性が世界の様々な事例や写真とともに暖かく分かりやすい言葉で語られ、とても説得力がありました。

講座に参加された方の感想です。

  • こうでなければいけないという自分の理想を辞めた
  • 子どもにお手伝いをさせてみたら、とても楽しそうにやってくれた
  • すぐにダメと行動を制限しないように心がけた
  • 子どもの集中を安易な言葉でさえぎることにハッとさせられたので見守りたい
  • 具体例やエピソードが多くてわかりやすい。たくさんの「やってみよう」と思えることがあった
  • 子どもたちがやりたがることをさせるようにしたら、自信をつけて自分で考えるようになった
  • 子育ての時間がクリエイティブなものと感じるようになった

特に印象的だった方をご紹介します。お子さんにダメと言うとお母さんを叩いてしまうことに対してどうするか、高子さんに質問した方です。「人は叩きません。叩いていいのは、これ(例:太鼓)です」と静かに落ち着いて伝えるというアドバイスをもらいました。

早速家で実践してみたところ、お子さんが叩かなくなりその変化に驚いたそうです。これまで「叩かないで!」と感情的に言ってしまったり、「叩かないでね」とお願い調で伝えていたけれど効果がなく、大切なことは威厳を持ってきちんと伝えることの大切さに気づいたそうです。また、講座を3回受けた事でお子さんが「球根」であることが身体に染み込んだと言います。それまであちこちの子育て講座に参加しても焦りを感じていたそうですが、それは空っぽのバケツに詰め込もうとしていたのだと感じ、子育てが楽しくなったと仰っていました。

もう一人印象的だった方。最終回の第3回に初めてパートナーと参加されました。これまでモンテッソーリ教育を日常で実践しようとしても意味をうまく伝えられず、旦那様の理解をなかなか得られなかったそうです。旦那様が高子さんの話を直接聞いたことで、旦那様の存在自体がお子さんにとってとても大切なこと、旦那様の言動がお子さんにとっての人的環境であり、そのまま吸収して学んでいることを知って、色々とご自身の言動を見直したいと仰っていたそうです。お二人で同じ方向を向いて子育てができるきっかけになったとすれば、主催者としてこれほど嬉しいことはありません。

講座には、たくさんの小さいお子さんが一緒に参加しました。会場のカフェといろいろびよりは、おとなと過ごすこどもの空間sumiccoのパートナー店。小さいお子さんが大人と過ごしやすいように工夫されたおもちゃと絵本のコーナーがあります。講座では、参加人数に合わせて高子さんからお借りしたおもちゃも合わせて用意。マットを敷き詰めたスペースでお母さんや周りの参加者と一緒に落ち着いて過ごしていました。小さいお子さんに「ダメ」ではなくて「どうぞ」と言える空間。子育て中のお母さんがお子さん連れで学んだり、イベントに参加したりすることがしやすい会場でした。

子どもは独立した個人であり可能性をたくさん持った球根であること、球根がそれぞれの花を咲かせていくために親や私たちまわりの大人が土づくり(環境づくり)を手伝うこと。私たちはこれからも皆さんとともに学び続け実践を重ねていき、子どもの存在や自分でやりたい気持ちが尊重され子どもインクルーシブ(※)なコミュニティを作っていきたいと思います。

※インクルーシブとは、一人ひとりの存在が尊重されて共に生きる、包摂することを言います。

(文責:ヨーコ)


2019-08-19 | Posted in イベント開催レポートComments Closed 

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