探してみよう 自分らしいまちと関わる暮らし方 第3回(20160728開催)

第三回「暮らしと地域の二足のわらじのはき方」ヨーコさん

第三回目にトークをしてくださったのは、この講座を企画した「まちのおやこテーブル」の呼びかけ人、ヨーコさん。いつも明るくエネルギッシュなヨーコさんは、会社勤めも続けながらどのようにして地域と関わることになったのでしょうか。

参加者の皆さんと意見も交えながら、地域と関わる暮らし方を深く考える時間が始まりました。

Lacuna

【欲しいから作る、で広がった「ワタシ」】

ヨーコさんが地域との関わりを求めたのは、第二子を妊娠中のことでした。仕事と子育てに手いっぱいな毎日、近くに頼れる人もおらず、このままでは暮らしも気持ちも持たない。けれど、これ以上何をすれば楽になるのかわからない、と悩む日が続いたといいます。

「会社の近くに居を移し、ベビーシッターを頼んで働くか、仕事を辞めて専業主婦になるか、という二択しかないのか?」 そう考えたヨーコさんは、なんとか状況を打開しようと動き始めました。

情報収集をする中で大きな気づきを得たのが、「職業人生は二回選ぶ」という考え方でした(ちきりん『未来の働き方を考えよう』 文藝春秋,2013)。40歳前後を境に働き方を変える場合のパターンがいく通りも紹介してあり、「生き方、働き方をリセットするやり方はいろいろあるんだ。人生でバランスをとるというバリエーションもあるんだ」、と発見があったといいます。

そこから、ヨーコさんの動きはダイナミックに展開していきます。週に一度、保育園の一時預かりを二時間利用して、妄想する時間を創出。国分寺に越してきて日が浅いため、保育園と家の往復だけでは頼れるママ友がいなかったものの、日常的にベビーシッターに頼るのは自分の感覚には合わない。仕事も子育てもあきらめたくない。こうした自身の不安や足りないもの、大切にしたい気持ちを書き出すうちに、「一番キツイと感じる平日夜にこそ、息抜きをしたい」、「仕事で忙しいけれど、地域とつながるきっかけがほしい」、「子どもも楽しく過ごせる場がよい」、「子育てを地域に開いてみよう」、といった、求める形が見えてきたのだそうです。

形が出来てきたら、他の人はどう思っているか、同じような立場のお母さんにもニーズがあるか、をのべ120人に調査。「子供と向き合う時間がなく、復職後の生活の質の低さに愕然とした」、「日常的な、ご飯を食べられる関係の友達が近所にいるといいな」、などの声が集まり、ヨーコさんは、自分が求める形が他の人にも受け入れられるものだ、と確信。ビジネスコンペに応募し、3回のトライアルを経て「まちのおやこテーブル」の活動をスタートさせたのでした。

こうして始まった「まちのおやこテーブル」は、暮らしとは異なる場所で仕事を持つヨーコさんが、仕事も子育てもあきらめない、という想いで考え抜いた末に生まれた「場」でした。自分のお店を持たず、地域のカフェなどの場所を借りて、定期イベント形式で運営するコンパクトなカタチができた結果、ヨーコさんの日常には笑顔が増え、住むだけの場所だった国分寺が、仕事と子育てを両立できる場所になるという期待も膨らんできたといいます。場所を借りるお店の方や参加者との意図しないつながりが生まれ、国分寺という場所というよりも、国分寺に住む人とのつながりが楽しい、と言うヨーコさん。「ママ」とも「会社員」とも違う「ワタシ」が、地域と関わることでぐんと広がってきている実感がある、という言葉には大きな説得力がありました。

【みんなにとっての地域と暮らし】

ヨーコさんのお話を聞き、地域と関わるパワフルな過程に熱をもらった第一部から、第二部では参加者が意見を交換し合います。

「あなたにとって、『地域』とは?」/「『地域』とどう関わりたい?」

この二つについて、3枚のカードに書き出しました。

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地域とは、成長の場所/安心できる場所/育ちを見守る場所/ホッとする場所、など、それぞれの体験したエピソードの中から、キーワードが次々に出てきました。参加者には子育て中の方も多く、顔見知りができることで得られる安心感や、子どもの近くで仕事が出来る喜び、など、地域の中で、人とつながりながら子どもを育てる良さを実感している方が多くいました。

「上の子が発熱して病院に連れていくときに、下の子を近所の人が見ていてくれた。地域の方にはいつも助けてもらっていて、本当にありがたい」という方がいる一方で、

「自分が育った岡山県では、地域が大きな家族のような存在だったけれど、東京では顔見知りもなく、初めは子育てをするのが不安だった」という方も。子育てをする人にとって、近くで頼れる存在や場所があることが、いかに重要であるかが強く伝わってきました。

地域って、何だろう?

子育てと「地域」が密接な関係にあるという前提で話が進む中、

「自分は、どこの仕事でも子どもを連れて行くし、あちこちに自分の仲間がいる、という生活をしているので、『地域』というものをあまり意識していないことに気づいた。広い範囲で行動しているので、自分にとって『地域』って、どこのことを指すのか、よくわからない」

と、これまで無意識に使って来た「地域」という言葉自体を見つめ直す問いかけもありました。

この発言を契機に、「地域」というものについてより深い考察が始まりました。

「地域」を「自分の子どもが一人で動ける範囲」、「小さい子を連れて気軽に行ける範囲」と捉えた人もいる一方で、「そういう意味では、自分にとっての地域とは子どもを介したものでしかない。『私人格』と地域との関わりは、ないのかもしれないと思った」という意見も。子育ての仕方やサポート環境、仕事とのバランスのとり方などは一人ひとり違っていて、違う数だけ「地域」の捉え方も違うのかもしれない、ということが浮かび上がってきました。

子育てと地域は物理的に、必然的に関わりが強いものだけれど、必ずしもそうとは限らない。また、関わっていると思っている「地域」とのコミュニケーションに、果たして「ワタシ」は存在しているのか。「私人格」として地域と関わるということは、どういうことなのか。考えがさらに深まっていきました。

【「ワタシ」と地域の可能性】

そんな中、新たな視座を投げかけたのが、「共通の趣味を介してつながる場」や「多様な人たちが集まって考え合える場」といった、「ワタシ」始点の地域観でした。例えば、地域の古書店で開催される朗読会に子どもを預けて参加したことで、読書と酒という自分の好きな事を介して、地域の新しいつながりを獲得した方。大人も子どもも裸の付き合いのある銭湯のような、パンイチ(パンツ一丁)の心になって語り合え、失敗を見せあえるような安心感のあるコミュニティや、多様な人が集まって、多様なことを考えられるような場を作りたい、という方。こうした、個々人が輝ける「場」を思い浮かべたとき、子育てを機に発見した「地域」の更に先にあるものが、見えるような気がしました。

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「さみしいから、不安だから、という理由で人の集まりに依存するようなあり方ではなく、『個』をしっかりさせることで、コミュニティが、よりよいものになっていくのではないか」

「『個』は細胞のようなもので、細胞がしっかりしていなければ、(細胞が集まった)体(組織体)もしっかりしない。『個』を整えることが大事ではないか」

という発言もあり、「個」、「ワタシ」、「私人格」といったキーワードを中心に、「地域」と自分について、考えが耕されていくような時間が経過しました。

気軽に使っていた「地域」という言葉を深く考えた結果、たくさんの発見がありました。地域やコミュニティの中にいる「ワタシ」を大切にし、意識することで、かえって周囲の景色を見る余裕ができ、周囲とのつながりをよりよく築くことができる。「それは、あるかもしれない!」 出産を機に仕事を辞め、「ワタシ」が揺らいだ経験があるリポーターも、思わず写真を撮ることも忘れて(ゴメンナサイ!)、自分の周辺について考え込んでしまいました。

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ここまで三回の講座を通して、様々な角度から「地域」というものについて、また、そこに暮らす人、働くこと、などについて考えてきました。次回はいよいよラスト。これまでの話を振り返りながら、総集編ともなる第四回を楽しみに待ちたいと思います。

(ライター あおきともこ)

印刷用PDFは(machitokakawaru_No.3

 

2016-08-23 | Posted in イベント開催レポートComments Closed 

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